278 本当にあった怖い名無し 警備員[Lv.4][芽] (ワッチョイW 41b8-Pu4T [126.2.245.50]) :2026/02/21(土) 13:28:14.58ID:0/s9YCuR0

長文すまん。身バレ嫌だから場所とか時系列ちょいぼかす。
実話っぽいけど、証拠出せとかは勘弁。吐き出したいだけ。

数年前、仕事で山奥の集落に何回か通ってた。
過疎ってて家が点々、夜は街灯ゼロ、電波もギリ。
役場で集落名出した瞬間「あー……」みたいな反応されて、その時点で嫌な予感はした。

で、集落の入口に石が二本立ってて、縄っぽいのが巻いてある。
注連縄っぽいやつ。結界みたいで気味悪い。
車停めて降りたら、いきなり近所の爺に声かけられた。

「名乗るなよ」

最初、意味わからんかった。
俺「え?仕事で来たんですけど」
爺「肩書きもいらん。名前言うな。ここで名乗ると呼ばれる」
爺の目が冗談じゃなくて、笑えないやつだった。

で、爺が俺の足元見て「踏み直してから入れ」って言う。
入口の地面に小石で線が引いてあって、そこ跨ぐ前に靴底こすれって。
俺「汚れ落とすんすか?」
爺「よその土つけたまま入ると混ざる。混ざったら戻れん」

何言ってんだと思いながらも、言われた通り靴底こすって線を跨いだ。
そしたら爺が「よし。これで土はお前のもんだ」って。
この言い方が今でも気持ち悪い。なんだよ土が俺のもんって。

279 本当にあった怖い名無し 警備員[Lv.4][芽] (ワッチョイW 41b8-Pu4T [126.2.245.50]) :2026/02/21(土) 13:28:40.38ID:0/s9YCuR0

集落の人らは基本感じいいんだけど、質問すると空気止まる。
特に昔からの行事とか風習系を聞くと露骨に話逸らされる。
その日の作業終わって帰ろうとしたら「夜道危ないから泊まってけ」って言われた。
断ると妙に微妙な顔されるから、好意として受けるしかなかった。

泊めてもらった家、古いけど手入れしてる。
ただ、壁の一面だけ板が新しい。そこだけ張り替えた感が露骨。
しかも爪で引っ掻いた跡みたいなのが薄く残ってた。

晩飯の時に婆ちゃんが言う。
「夜は戸を開けるな。窓も開けるな。外に出るな」
俺「熊っすか?」
婆「熊は戸を叩かん」
同居の爺がぼそっと「戸を叩くのは熊じゃない」

この時点でだいぶ帰りたかった。

夜、寝る直前に外で鈴が鳴った。
チリンチリンじゃない。不規則にガシャ…チン、チン…みたいな鳴り方。
獣よけの鈴だろうけど、音が近い。家の外壁あたり。

婆ちゃんが火を落として小声で「もう鳴らす日か」って言う。
爺が「口、閉じとけ」って。
俺が「何の日…」って言いかけたら婆ちゃんがシーってして、電気消された。

280 本当にあった怖い名無し 警備員[Lv.4][芽] (ワッチョイW 41b8-Pu4T [126.2.245.50]) :2026/02/21(土) 13:29:22.01ID:0/s9YCuR0

暗闇で、外を何かが歩く音。
土の上を歩く音じゃない。
濡れた雑巾を引きずるみたいな、ぬるい足音。
ぺた…ぺた…みたいな。
で、玄関の前で止まった。
コン…コン…って、優しいノック。
礼儀正しいノック。強くない。
婆ちゃんが「返事するな」って、爺が「名を呼ばれても返すな」って言う。
名?って思った瞬間、外から声。
「開けて」
女の声。若いってより、懐かしい声。
次の瞬間、俺のフルネームを呼んだ。
俺、ここで名乗ってない。役場でもフルで言ってない。
なのにフルネーム。
背筋が冷えるってより、内臓が落ちる感じした。
婆ちゃんが俺の口を手で押さえてきて、爺が耳元で
「呼ばれても返事するな。返したら借りられる」
婆ちゃんが小声で「口」って言った。
外の声、母ちゃんの声にそっくりだった。
「○○、開けて。寒いよ」
本当に母ちゃんがいるわけないのに、心が揺れる。
声に温度がある。昔の記憶を直接撫でられてるみたいで、反射で開けそうになる。
その時、鈴がまた鳴って、ノックが変わった。
コン…コン…が、カリ…カリ…になった。
爪で引っ掻く音。
木を削る音。

281 本当にあった怖い名無し 警備員[Lv.4][芽] (ワッチョイW 41b8-Pu4T [126.2.245.50]) :2026/02/21(土) 13:29:38.37ID:0/s9YCuR0

爺が俺にだけ聞こえる声で言う。
「明日、開ける日だ。お前が来たから早まった」
俺「何を開ける…」
爺「道」
婆ちゃんが「旧道」って言った。そこだけ妙にハッキリ聞こえた。

その夜、引っ掻く音はずっと続いた。
朝方やっと静かになって、鳥が鳴いた頃に気絶みたいに寝た。

朝、玄関の前の土が荒れてた。
足跡がある。人の足跡じゃない。
裸足っぽい跡が何重にもついてて、指の数が多い気がする。
数えようとしたら婆ちゃんが「見るな」ってホウキで一気に消した。

その後、集会所みたいなとこに連れて行かれた。
若い男も女も集まってるけど、全員口数少ない。
長老っぽい婆さんがいて、地面に塩撒いて丸を作った。
その丸の中に縄を置かされたんだけど、その縄が湿ってて重い。
赤黒い染みもある。

長老が「口を閉じろ」って言うと、全員一斉に口を噤む。
俺も真似した。喋ったらダメって空気がヤバい。

282 本当にあった怖い名無し 警備員[Lv.4][芽] (ワッチョイW 41b8-Pu4T [126.2.245.50]) :2026/02/21(土) 13:30:03.38ID:0/s9YCuR0

で、長老が草むらの根元に手突っ込んで何かを引っ張った。

ずるっ

草が割れて、そこに道が出た。
マジで道。
昨日まで草があった場所に、土の道が一本。
一直線で、奥が見えない。

空気が変わった。
湿った土の匂いが一気に濃くなる。土っていうか、濡れた布団みたいな匂い。
道の奥から足音。ぺた…ぺた…。
誰も見ない。俺も見れない。見たら終わるって本能で分かった。

足音が止まった。目の前で止まった。
いる。そこに“何か”がいる。
なのに誰も顔を上げない。

長老が小さく言った。
「今年は誰が閉める」

沈黙。
誰も動かない。そりゃそうだろ。
閉めるって何だよ。

283 本当にあった怖い名無し 警備員[Lv.4][芽] (ワッチョイW 41b8-Pu4T [126.2.245.50]) :2026/02/21(土) 13:30:26.32ID:0/s9YCuR0

長老が俺を見る。
「外の者。借りた口があるな」

その瞬間、周りの若い男が俺の肩掴んだ。
支えるみたいな掴み方。でも逃げ道はない。

泊めてくれた爺が俺に小声で言った。
「悪い。決まりだ。開けた年は外の者が要る」
俺(口パク)「なんで俺」
爺「来た時点で境を跨いだ」

目の前の“何か”が、ゆっくり頭を傾けた気配がした。
そして俺の名前をまた呼んだ。今度は耳元。

母ちゃんの声で「こっちおいで」って。

俺、泣きそうになって顔上げそうになった。
婆ちゃんが背中叩いて「見るな!」って叩かれて、変な感覚が解けた。
夢から覚めるみたいに。

長老が俺に縄の端を握らせた。
道の入口を横切る形で縄を回して、左右の石柱に結べって。
手が震えて結べない。

長老「結びは適当でいい。締めだけは間違えるな」

284 本当にあった怖い名無し 警備員[Lv.4][芽] (ワッチョイW 41b8-Pu4T [126.2.245.50]) :2026/02/21(土) 13:31:01.27ID:0/s9YCuR0

俺が縄回してると、縄が動いた。
ゆっくり、でも確実に道の奥へ引かれる。
俺の体ごと引っ張られて、足が道に乗った。

足裏の感触が最悪だった。
土じゃない。ぬるい肉踏んだみたいに、ぐにゃって沈む。
沈むってより、絡め取られる。足が食われる感じ。

声出そうとしても口が開かない。喉だけ鳴る。

後ろの若い男らが俺を掴んで必死に引くけど、それでも縄の力が強い。
道の奥から声。

「いい子だね」
「こっち」
「寒い」
「開けて」

全部、母ちゃんの声のまま。

長老が叫んだ。
「締めろ!!」

俺、反射で縄を締めた。結び目をギュッて。
その瞬間、道の奥から悲鳴が出た。
女の悲鳴じゃない。獣みたいな、潰れた喉の悲鳴。
足元の“肉みたいな土”が、びくって縮んだ。

俺は尻餅ついて後ろに倒れて、引きずられて道から外された。

285 本当にあった怖い名無し 警備員[Lv.4][芽] (ワッチョイW 41b8-Pu4T [126.2.245.50]) :2026/02/21(土) 13:31:23.40ID:0/s9YCuR0

そしたら村の人ら、作業が早い。
板を持って走ってきて、道の入口に打ち付けて、土被せて、草戻して、最後に鈴を結ぶ。
慣れすぎ。手際良すぎ。

鈴が不規則に鳴った。
まるで中で何かが暴れてるみたいにガシャガシャ。
でも数分でスッと静かになった。

道は消えた。
最初から無かったみたいに。

その日、帰りたかったけど止められた。
「今日は無理。境が開いてる。夜を越せ」って。
従うしかなかった。

夜、また鈴が鳴った。
今度は玄関じゃない。
家の中、あの新しい壁の方から鳴る。すぐそこ。
チン…チン…って、近い。
俺は布団に潜って絶対壁を見ないようにした。
なのに壁の向こうから声がする。
「返して」
「口、返して」
俺の口の中が急に生ぬるくなった。
舌の上にざらっとした感触。砂かと思ったら土。
噛むとジャリって歯に当たる。
吐き出そうとしても吐けない。
口が開かない。本当に開かない。

286 本当にあった怖い名無し 警備員[Lv.4][芽] (ワッチョイW 41b8-Pu4T [126.2.245.50]) :2026/02/21(土) 13:32:01.43ID:0/s9YCuR0

朝、爺が俺を起こして
「靴底こすれ。振り返るな。ここで礼も言うな」
って言った。
俺は言われるまま入口の石の上で靴底こすって、線を跨いで出た。
マジで振り返らなかった。怖くて。
山道下って電波戻った瞬間、スマホ鳴った。
母ちゃんから着信。
普通の声で「大丈夫?連絡ないから心配してた」
そこでやっと泣きそうになった。普通の世界に戻ったって。
……で、終わりならよかった。
半年くらい経った冬の終わり。
家で風呂掃除してたら、排水口のゴミ取った指に細い縄の繊維みたいなのが絡んだ。
糸くず?と思って嗅いだら、あの匂い。
濡れた布団みたいな土の匂い。
その瞬間、玄関で鈴が鳴った。
チン…チン…って不規則に。
俺の家、鈴なんか付けてない。
玄関行ったら、ドアノブに小さい鈴が結び付けられてた。
編み方が、あの村の鈴と同じ。
外から声。
「開けて」
母ちゃんの声。
ありえない。
母ちゃんは実家。鍵も俺しか持ってない。
なのに声がする

287 本当にあった怖い名無し 警備員[Lv.4][芽] (ワッチョイW 41b8-Pu4T [126.2.245.50]) :2026/02/21(土) 13:32:33.84ID:0/s9YCuR0

「寒いよ」
「土が乾いちゃう」
声がどんどん近くなる。
ドア越しじゃない。部屋の中で囁かれてるみたいに。
ドアの向こうで、カリ…カリ…って音。
爪で引っ掻く音。木を削る音。
この時、やっと分かった。
母ちゃんの声“みたい”なんじゃない。
俺の中にある母ちゃんの声を使って喋ってる。
だから温度がある。だから逆らえなくなる。
鈴は外して捨てた。
翌日、またドアノブに付いてた。
誰にも言えない。
言ったら「借りた口」になる気がして。
最後に一個だけ。
あの村の入口で爺に言われた言葉、今なら意味が分かる。
「これで土はお前のもんだ」
違う。
俺が土を持ったんじゃない。
土が俺を持った。
今もたまに、枕の下とか靴箱の隅に湿った土が出る。
掃除しても出る。
で、鈴が鳴ると、たまに聞こえるんだわ。
「今年も開くよ」
「閉めてね」

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